新聞報道の情報元がどこだけあやしげだったり、
テレビ番組の取材を受けた題材になった方が、事実と全然ちがうと声をあげたり、
メディアを通じてもたらさられる情報のどれが真実でどれが嘘だか、正直、僕には分かりません。
ただ、そこに嘘や曲解が混じっているのは間違いなさそう。
きっと世の中は真実だけでできているわけじゃないようです。
じゃあ、嘘にぶち当たったときに、何を考えれば良いんだろうか。
そんな当たり前のことを、あらためて考えさせてくれる本に出会いました。
といってもジャーナリズムの本じゃなくて、童話のような楽しい小説。
「ほどほどにちっちゃい男の子とファクトトラッカーの秘密」です。
目に見える真実や嘘
「真実」や「嘘」が商品として扱われるこの話の中で、それらは目に見える形で存在しています。
主人公の「ほどほどにちっちゃい男の子」の部屋には、真実がたくさん貼ってあるし、
舞台となる「トラアーカーファクス」には、真実や嘘が、泉から吹き出る水のようにばらまかれます。
そこで僕が想像したのは、twitterにあふれるpostの数々やwebを埋め尽くす様々な記事。
あと、テレビの番組や新聞の記事。
もちろん嘘をつこう、だましてやろうと思って、言葉をつむぐ人は少ないだろうけど、
そこにあるのは真実だけなのか。もしかしたら嘘も混じっているのでは?
そして、もしそこに嘘があるのならば、その嘘はなんのためにあるんだろうか。
分からないけれど
「ほどほどにちっちゃい男の子とファクトトラッカーの秘密」の中には、
「社会の善し悪しを決めるのは、そこにどれだけの嘘があるかではない。どれだけ信じるか、なんじゃ」
と話す老人が出てきます。
世の中、嘘かまことか、だけじゃないんですよね。
大事なのは、自分が何をどれだけ信じるか。
webやマスメディアの中にある言葉を、絶対的な嘘が真実かになんて、僕には分けられません。
分けられないということは、分からないということ。
でも、分からないまま放っておいて良いわけじゃないこともある。
ならば、自分で信じられるものを探さなくちゃいけないし、
そのためには、信じられる自分をみがかなくちゃいけない。
印象的な本でした
「ほどほどにちっちゃい男の子とファクトトラッカーの秘密」は、すごく楽しくて、
ワクワクする話だし、別に説教くさい児童文学でもなんでもありません。
冒険活劇をしっかり楽しませてくれた上で、ちょろっと、そんな面倒くさいことも
考えさせてくれる、すごく素敵な話です。
翻訳者の小林美幸さんの苦労も、そこかしこに見えるし、
装画の米津祐介さんのイラストも、すごくかわいらしい。
本屋でたまたま見かけただけだけど、すごく印象的な一冊に出会うことができました。
世の中、「真実か嘘か」が大事なわけじゃないんですよね。
もちろん、メディアの嘘は良くないですけどね。
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